今回は比較的安価なHIPSが入手できたので、ABSとHIPSの組み合わせを試してみることにしました。HIPSはリモレンという柑橘類から取れる溶剤によく溶けます。ABSはリモネンに溶けないのでHIPSだけが残るって仕組みです。リモネンがポリスチレンを溶かす仕組みは検索してください。大事なことはアセトンなどの有機溶媒とは違う仕組みなので代用が効かないってことです。リモネンを安く売ってるところを探したのですが、なかなか見つかりません。結局HIPSよりも大分高くなりました。
さて、今回のテストに使うデータですが、溶解除去可能なサポートのテストの定番として、ThingiverseからHilbert Cubeを借りてきました。サポート構造のデータも用意されていますが、今回はSlic3rの自動生成サポートでも大丈夫か知りたかったので敢えて使用しません。早速ですがABS(青)、HIPS(白)で出力しました。
サポート材が白なのでもう一方のノズルが引っかかった後が目立ちますね~。ノズル交換時のリトラクション設定が甘いんだと思いますが、まだ解決してません。
リモネンは無色透明の液体ですが、柑橘類の匂いの成分らしく、柑橘類の皮の匂いを濃縮した感じです。密閉できる容器じゃないと家中が柑橘類の香りで満たされます。ちょうどいいサイズの入れ物がありました。鮭フレーク…
出力したものが完全に沈む量のリモネン(50~100ccくらい)に漬け込みます。待つこと数時間。(時々瓶を揺らしたり、溶けかけたサポート材を剥がしちゃったりしました)
瓶から取り出し、軽く洗ったのがこちら。
HIPSはほぼ完全に溶解し、ABSだけが残りました。無色透明だったリモネンは白く濁り、どろっとしています。ABS表面にも結構しつこく残りました。水で流したら溶けてたプラスチックが出てきて手がべとべとになりましたが、ABSの方は綺麗になりました。
すでに先人達が報告してる通りHIPSにリモネンの組み合わせで溶解除去可能なサポートが実現できました。しかし、いくつかの問題点が…
- コスト。HIPSフィラメントは意外と安いのですがリモネンは高いです。リモネンに溶けるHIPSの量はそんなに多くないので、コストがかさみます。リモネンの再生ってどうやるんだろ。
- リモネンに溶けたHIPSが表面についています。これを綺麗にとるのは結構大変。新品のリモネンで洗えばいいのかな?
- リモネンが残った部分にしみこむのか、強烈な柑橘類の匂いがします。いずれはなくなる匂いなのかもしれませんが、身につけるものの作成には向かないようです。
- 出力したものが丸ごと収まる密閉容器が必須で、大きすぎる容器は必要になるリモネンの量も多すぎるので、必要な大きさの容器をそろえることになります。これが意外と大変です。
色々と課題が残る結果になってしまいましたが、通常だとサポート除去が難しい構造でもリモネンが届くなら除去できる点、力が要らないのでサポート材の中に微細な構造が埋まってるようなケースではすごい威力を発揮すると思います。もう少し検討を続けるつもりです。
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